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玄関ドアを開けると、600万円かけてフルリフォー ムした新しい建材の匂いが迎えてくれる。リビングに 繋がる扉を押せば、辺り一面に広がるバルコニーから の眺望に圧倒されてしまった。カーテンを閉めること を拒否したように広がるその景色は、夜景という人工 的な宇宙でさえも、輝いて見えてしまうことを容易に 想像させてくれる。常にニュートラルな状態にあるこ とを願うように、この部屋の空間はとてもデザインチ ックでもあり、あるいは空虚でもある。部屋に設置さ れた食洗機付のシステムキッチンとエアコンが、日常 という必要最低限の秩序を構成している。 正直な感想を言うと、
「あああ、独身だったらこのマンション買うな。」
というような空間である。 あるいは、近代化のプロセスの中で、「家族」という ハコから抜け出し、一人の寂寞に耐えてきた者の褒美の 空間である。
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